blog

ブログ

大人の童話 アセンション・五次元地球へ そのⅠ

  • 大人の童話
  • アセンション・五次元地球へ
  • 由美は里を後にして新幹線に乗る。幸い往復の切符が手に入っていたので席に座ることができた。でも、何か疲れが溜まっているのを感じたが、席につき荷物の整理をして、母親が準備してくれたお弁当を、下げ鞄の中から出して夕食の準備にかかった。準備といってもお弁当を出して再び身軽にな、駅のプラットホームで暖かい味噌汁と食後のコーヒーを買う。
  • 席は窓際、隣には年配の女性がいた。女性で良かったとほっとしている。何故なら、里帰りに行くとき隣には、若い男性で何かソワソワしていて落ち着くことができなかった。ヘッドホンから音が漏れるほど大き音楽を聞くし、いびきはするし、たばこの臭いはするし、何か自分も落ち着かない心境が伝わって快適な旅ができなかった。
  •  その点、今回は合格。優しそうなご婦人だし、母親のお弁当は美味しいし、何よりも嬉しかったのは自分にお見合い話が舞い込んでいたことだ幼友達が仲人を立ててお見合いを進めてきたのだ。私は地元の高校を出てそのまま東京で小さな塾を開いている。幼友達は別に嫌いではないのだが、結婚となるとこの人は違うと思い断った。母親は少しお付き合いしてからお断りしたらと助言してもらったが・・・。やはりお断りした。でも相手には申し訳ないのだが、人から好かれていたことを知るだけで暖かいものを感じている。
  • お弁当を食べ終わり、コーヒーに舌づつみをしていると、全部飲み干さないうちに眠ってしまう。
  • 林由美二十五歳、東京で子供たちにピアノを教えている。里は岡山県倉敷と言えばご存知の方も多いだろう。どのぐらい寝ていただろうか?周りの騒がしさに目が醒める。
  • 何かあったのですか?
  • 隣のご婦人に尋ねた。
  • 静岡で地震があり、線路の点検のために京都でしばらく停車するそうよ
  • 静岡で地震!大きな地震ですか?
  • いいえ、なんでも震度五弱で一時間ぐらいの点検でまた動くそうよ
  • 由美は丁寧にお礼をいい、自分から名を名乗り里帰りして東京へ帰ることを話した。ご婦人も自分のことを話てくれた。大迫ふみ五十歳彼女も東京へ帰るところ。なんでも、ヒーラーであるそうな、ヒーラーって何?由美は興味深々で大迫さんに色々と尋ねる。ふみさんの話は由美にとって初めて聞くことばかりで、死後の世界、カルマ、前世、天国など、由美は初めて聞く未知の世界を素直に驚き聞いていた。
  • 由美さん、あなたはどうも私と縁があるみたいよ。はじめての未知の世界の話をすんなり受け入れるなんて、由美さんあなたの仕事は音楽でしょう?それも、ピアノが浮かぶわ
  • え!そこまで何故分かるのですか?
  • 由美にとって、驚きと珍しさも相まってふみさんに色々と質問や、アドバイスをしてもらう。特に気にいったのは、縁のある男性が近くあなたと接触するみたいよと言われ、見合いの話を浮かべたが打ち消した。そんな具合で東京に無事に着き、お別れするまでの時間はあっという間だった。
  • 東京の駅は混雑している。荷物を両手に人ごみをかき分けながら帰路につていたときに、不思議な声がした。
  • ・・・早く、荷物をその柱の右角に置いて、早く!・・・
  • 由美は半信半疑で声を疑った、もう一度はっきりと声が聞こえる。自分の心の中から・・
  • 由美は声に従って今度は素早く指示された柱に荷物を置いた、置いた瞬間、「どん!」と荷物を蹴飛ばされ一人の男性が転んだ。後から警察官二人が追いつき、手錠を出し「ガチャ」と手錠をかけた。
  • 余りの突然の光景に唖然として、由美は立ちすくんでいる。
  • ありがとうございます。お怪我はありませんか?
  • 手錠をかけた警察官は一礼して、足早に立ち去った。もう一人の警察官が蹴飛ばされた荷物を持って来て、由美に荷物を渡して挨拶をする
  • ええ、怪我はありません
  • 荷物を蹴飛ばされたので何か壊れているか、中身を調べてもらえませんか?
  • はい、調べてみます」
  • 由美は荷物を開いた、自分のお土産に買った備前焼きの器が粉々に壊れていた。覗き込むように警察官がバックの中を見ている。
  • 壊れていますね、お礼と壊れた品物の弁償で、お時間があれば番所が近くなので来ていただけませんか
  • 由美はこの時初めて警察官の顔をまじまじと見た、何て綺麗な瞳なんだろう、優しい気持ちにさせるものを持っている人だと見つめていた。相手の警察官も何かを感じたのだろう。お互いしばらく見つめ合い、警察官の方から声がかかる。
  • こんなことを言うのは失礼になるかもしれないですが、あなたはとても素敵な人ですね
  • え!ありがとうございます、あなたもとても素敵ですよ
  • え!本当ですか。あ、ありがとうございます・・・。何か変な話になりましたね、アハハハ
  • 由美もつられて微笑んだ。番所では五・六人の警察官がいて、忙しそうに来客に対応していた。落し物をした人。場所が分からず地図を広げて説明を聞いている人。先ほど手錠を掛けられた人を奥で対応している人。そして、小さな女の子が泣いている。若い警察官が対応しているのだが、泣き止みそうもない、困っている様子に由美は歩み寄り女の子をなだめた、ピタっと泣き止み若い警察官が感心している。先ほどの警察官が書類を持ってきた。
  • うまいものですね、やはり女性ですね。先ほどは本当にありがとうございました。あんなに素早く逃走している人の前に荷物を置いて、捜査に協力して頂けるなんて光栄です。でも、大切な物が壊れてしまいましたから、本来は弁償できないのですが、捜査に協力して頂いたということで、費用をお出しします
  • え!わたしそんなつもりで荷物を置いたつもりはないのですが
  • てっきり逃走中の協力に見えたのですが、違いますか・・・。どちらにしても、捜査に協力してもらったということで、金一封しか出ないのでこれで何か代わりの物を買ってください
  • 由美は困ったが、警察官の言う通りに金一封を受け取り、番所を離れる。その日から、由美に変化が起きる、
  • 先生、何か変よ。ぼ~っとしていて、いつもの先生と違うよ!
  • え!ぼ~っとしていてごめんなさいね、先生何か変だよね
  • 生徒のピアノ練習に身が入らないのだ、由美は自分でも、以前の生活に戻れないことを知っていた、あの日以来のことだ。
  • それから数日たったある日、いつもの行きつけの喫茶店でお代わりのコーヒーをカウンターへ貰いに行くときにTVのニュースに釘ずけになる。
  • 今日、十時三十分ごろ東京駅で勤務中の警察官「沖正人」さんが、線路に落ちた人を救うために線路に飛び込み死亡しました。落ちた人は奇蹟的に無事ですが、死亡した警察官の身を投げ出してまでの行為に多くの人の涙を誘い、東京駅に作られた献花台には、無数の花や水が置かれ・・・。
  • あの人だ!
  • がちゃ~ん。コーヒーカップを落としてしまった。
  • それから、由美はどのルートで東京駅に居るのか思い出せない。献花台の前で泣いている自分がいた
  • 何故、死んだの?どうして・・・。
  • 涙が留めなく流れて止まらない。通る人ごみは親族なのだろうと涙を誘っている。
  • どのぐらい泣いてそこに居たのだろう、優しく肩に手を差し伸べる人がいた。振り向くとあの番所で迷子の女の子をあやしていた若い警察官だ。
  • やはりあなたでしたか、正人はあなたのことが気になり、捜査協力で書いてもらった書類から住所を捜して、あなたに交際を申し込もうと先日、その書類を捜しているところだったんですよ。正人がこんなことになりさぞかし気を落としていることでしょう。どうですか、正人は母親と二人暮らしで、あなたのことをお母さんに伝えているようでしたよ。お母さんはとても喜んでいて、あなたにいつ会えるのかもう催促しているとか、今朝、正人は言っていました。母親の住所教えますよ・・・あ!ごめんなさい
  • 由美はこの話を聞いたとたん、途中で激しく泣き始めて若い警察官はどうしていいのか立すくんでしまった。
私も、もらい泣きをしてしまって、由美さんをどうしてあげればいいのか、涙を拭きながら考えています。 え!筋書を考えていないのかって!そうですよ。いつも一気書きです。信じられますか?でも本当です。早く、素敵な筋書きを考えろですって、ハイハイ。・・・う~む、浮かんできました。
  • 正人の葬儀が終わり、初七日の法要が昨日とり行われた。葬儀が終わっても毎日献花する人が多く、玄関の前には献花台が設けられ、夜となると誰となくガラスに入ったろうそくが置かれ、荘厳な灯りが毎夜輝いていた。
  • 里から上京してきた両親は、沖家ととても懇意になり昨日帰郷した。その間沖家に泊まり由美と母親を元気づけて日々の生活と葬儀を手伝い悲しみのなかにも、新しい親族が出来たことを喜んでいた。
  • 由美さん、少し落ち着いたかしら?
  •  私は大丈夫といえばウソになりますが、寂しさの中に何か暖かいものを感じます。正人さんのお母さんと一緒だから新しい家族が出来た喜びが寂しさを和らげていると思います。お母さんこそ、どうですか?
  • ありがとう、わたしも息子が他界したけど娘ができたので寂しさと嬉しさが両方あるの、由美さんいいものをお見せします
  • ふみは、離れの家を指差して由美を案内した。
  • 由美さん、離れの家にはまだ行っていないでしょう、あなたにプレゼントするのもがあるの
  •  私にプレゼントですか?ワーイありがとうございます。
  • ,
  • 由美はふみの後をついて離れに向かった。庭の飛び石を歩きながら離れの引き戸を開けて、部屋に入る。すごい!本がいっぱい図書館みたい。それも普通の本でなくて不思議な本ばかりですね
  • 由美さん、あなたは正人に会うためにこの本で勉強しなさい。正人に会う為だけでなくあなたの為にも勉強してほしいの、あと私がアセンションの勉強会を開催しているから、こちらも出てほしい沢山本があるけど、由美さんの心の中でまずどれから読んだら良いのか尋ねてごらん、最初、読む本が自覚できるし、次々と読む本が分かるわよ、楽しく学んでほしい
  •  はい、お母様。
  • それから、隣の部屋も見てごらんなさい
  • 由美は隣の部屋をのぞいて、立ちすくんでしまった。グランドピアノがあるのだ。
  • このピアノはおじいさんのものだけど、正人はピアノの練習が続かなくて、警察官になったの。由美さんあなたは、子供たちにピアノ教えていたわね、どう、ここで塾を開いたら?先月調律もすませてあります。私もこんなことになるとは、予想もしなかったけど調律をしなければという強い気持ちがおさえきれなかったの
  •  ・・・。
  • 由美は答える代りに、ピアノを弾きだした。モーツァルトの曲を次々と弾きこなしている。ある時は悲しく、ある時は力強く快活に、ある時は優しく、ふみは昔おじいさんの演奏の記憶がよみがえってきた。なんだろう暖かい気持ちにさせられる。とてもいい。
  • 由美自身も不思議な感覚を覚えていた。これほど深い悲しみを体験した後だからなおさら、曲に深みがつき、今までこんな風に弾いたことがなかった。
  • ピアノの曲が外に流れ、通る人ごみや献花をしている人に聞こえてきた。ある人は通りすがりで立ち止まり、献花をしている人は花を置こうとしてそのままの姿勢で聞き入っている。二人三人と人が増え、一時間あまりの曲が終わるころには、玄関から庭、道路まで人がいっぱいになっている。
  • しばらくして、曲が終わったことを知った観衆は割れんばかりの拍手喝采で、ふみと由美の所まで聞こえてきた。由美は玄関に出て来た。
  •  聞いてくれてありがとうございます。暖かいご声援とても嬉しいです。
  • また聞かせてくれや!
  • わたしも聞きたい
  •  また弾かせてください、本当にありがとうございました。
  • 再び観衆の暖かい拍手が誰止めることなく、いつまでも聞こえていた。
  • 、つづく

アーカイブ